名前:井上巨人
担当情報実験機:joho01
スクリプトはこちら:quiz1.rb.txt
上のスクリプトをコピーした拡張子.rbのスクリプトを用意し、3つのデータファイルを以下のリンクから
$ wget [ファイルのリンク]
コマンドでダウンロードした後、コマンド
$ ruby [スクリプト名]
をスクリプトとデータの存在するディレクトリ上で実行してください。
そののち、作成されたpngファイルを
$ convert -delay 100 -loop 0 dcl_*.png movie.gif
で動画ファイルに変換します。
作成した動画ファイルは
$ eog movie.gif
で閲覧することができます。
データファイルはこちら:slp2019.nc,
uwnd.10m.gauss.2019.nc,
vwnd.10m.gauss.2019.nc
動画はこちら: result1.gif
図は2019年9月5日から11日にかけて海面気圧と地表面速度ベクトルを同時に描画したものです。描画期間は、目視で15号の存在が確認できる区間としました。
まず、海面気圧のデータからは台風15号の構造を読み取ることはできませんでした。これは、NCEP/NCAR再解析データの分解能が2.5度(距離にして280km程度)であるため、暴風域(*1)が150km程度である台風15号を、現象として十分に捕捉できていないためだと考えられます(*2)
実際、上に挙げたものと同じスクリプトと同じデータを用いて、暴風域の直径が300km程度の台風19号を描画してみたところ(描画範囲と時間のみ変更しています)、中心気圧の推移や軌跡は、台風15号に比べてある程度読み取ることができました
一方、地上風のデータからは、分解能の為、誤差は大きいですが、おおよその中心位置と暴風域を見積もることができました。
台風15号の動画はこちら:typhoon15.gif
台風19号の動画はこちら:typhoon19.gif
(*1)...局所的な力学的平衡が、遠心力と圧力傾度力で成り立つと考え(旋衡風)、曲率半径75km、風速25m/s、密度1kg/m^3であると仮定すると
U^2/R = -∂(p/ρ)/∂n [U...風速,R...曲率半径,p...圧力,ρ...密度,n...流れに対し右向きの単位ベクトル]
より、
|Δp| = Δn*11*10^(-3) [単位はN/m^2 = pa]
とわかります。このことから、台風15号の暴風域の縁では、おおむね40kmで4hpa(気象庁の等圧線間隔)下降する程度の圧力傾度力であることが推測できるため、暴風域は低気圧のスケールを推定するのに利用することができる。
(*2)...一般に現象を十分に捕捉するには、最低でも現象スケールの五分の一程度の分解能が必要とされています。
9月7日0時...東経145度、北緯25度の日本の南方海上に擾乱が存在しています。
9月8日0時...そのまま北西に進んだ擾乱が東海域海南部に存在しています。
9月9日0時...北東に大きく進路を変え、関東付近に存在しています。
9月10日0時...そのまま北東に進み、位置の判断が不可能になりました。
10月10日0時...東経140度、北緯23度の日本の南方海上に990hpaを下回る低気圧が存在しています。
10月11日0時...北北東に進み、東経137度、北緯27度の日本の南方海上に、中心気圧が980hpa程度の低気圧が存在しています。
10月12日0時...北に進み、東海海域南部に中心気圧975hpa程度の低気圧が存在しています。
10月13日0時...北東に進路を変えたあと、日本を通り過ぎ、東経140度、北緯40度に達しています。12日の間に、台風に特徴的な対象構造は急速に崩れてしまい、この時には温帯低気圧に変化しかけていることが読み取れます。
小倉義光"一般気象学"(東京大学出版会,2016)[p231..242],"総観気象学入門"(東京大学出版会,2008)[p187..194]...台風、低気圧に関する知識を参考にしました
松田佳久"気象学入門"(東京大学出版会,2014)[p139..142]...力学平衡に関する知識を参考にしました
上野充,山口宗彦"台風の科学"(ブルーバックス,2012)...台風に関する知識を参考にしました
気象庁"令和二年東日本台風(台風19号)による大雨、暴風等""...暴風域や進路等を参考にしました
地球流体電脳倶楽部"Gphys チュートリアル"...スクリプト作成の参考にしました
なし
はじめは描画の問題かと思いましたが、風と気圧配置はお互いに対応していることや、ある一定の大きさ以上の現象は表現されていること、気象庁のデータと再解析データで相違がみられることから、分解能に問題があると考えました。
台風15号の描写では、構造は読み取れませんでしたが、台風19号の描写では、対象構造や発達、減衰、そして低気圧化を読み取ることができて嬉しかったですし、分解能の大切さを身をもって感じることができました。
スクリプトを作成する際には、地球流体倶楽部のサイトを参考に、描画トーンの統一やカラーバーの間隔など、細かい設定を施しました。
スクリプトはこちら:quiz2.rb.txt
上のスクリプトをコピーした拡張子.rbのファイルを用意し、下のリンクから4つのデータファイルを
$ wget [ファイルのリンク]
コマンドでダウンロードした後、コマンド
$ ruby [スクリプト名]
をスクリプトとデータのあるディレクトリ上で実行してください。
作成されたpdfファイルは、evinceがインストールされているなら、
$ evince dcl.pdf
で閲覧することができます。(インストールされていない場合は適宜インストールしてください)
またその際、図が縦方向に表示される際は、
$ convert -rotate 90 dcl.pdf
にて方向の転換を行ってください。
データはこちら:air.mon.mean.nc,
pr_wtr.mon.mean.nc,
slp.mon.mean.nc,
omega.mon.mean.nc
pdfはこちら:result2.pdf
*10月30日以降pdfファイルに対するconvertコマンドに対しエラーが出ているため、現在縦方向のままとなっている状況です。閲覧する際はブラウザで方向を変えていただければ見やすいと思います。
図はエルニーニョ監視海域(*3)において、パラメータの平年値(*4)を2011年から2019年にかけて年平均したパラメータから差し引いた図です。描画したパラメータは、上から地表面気温(temp)、可降水量(precipitable water)、海面気圧(sea level pressure)、鉛直p速度(omega)となっており、鉛直p速度の図のみ南緯5度から北緯5度までの平均値を、経度、圧力軸で描画し、それ以外のパラメータは経度、緯度軸で描画しています。
以下はそれぞれの図に関して読みとれたことです。
・地表面気温...特徴として2015の平均図に最大で2度近い気温偏差が読み取れます。本来は海水温で判断する現象ですが、海水温が直上大気に与える影響を考えると、少なくとも2015年の間は顕著な(気象庁の定義する)エルニーニョ(*5)が発生したことが読み取れます。
・可降水量(*6)...全体的に気温偏差の図を誇張したような偏差分布をしており、特に2015年の平均図の分布は気温偏差分布とほぼ同じ分布となっています。この対応関係から、海面水温(描画では地表面気温)が、降水量や空気中の水蒸気量と直接的に関係していることがわかります。
加えて、2011、2012、2013、2017、2018年の平均図では、経度が200度の域を中心として偏差が負の領域が見られ、それに相反する形で、経度130度の域を中心に偏差が正の領域が見られます。つまり、この領域間には長期的な負の相関があり、南方振動が発生していると考えられます。
・海面気圧...上に述べた気温偏差の高い領域に負の偏差が、低い領域に正の偏差が対応していることが読み取れます(*8)。
また、2011年の平均図では、経度200度に大きな正の偏差、経度130度付近に大きな負の偏差がみられ、2015年の平均図では、経度260から270度に大きい負の偏差、経度150度付近に大きい正の偏差がみられます。この図だけでは判断出来ませんが、気温や鉛直p速度の分布と照らし合わせて考えると、8から10年程度の周期をもった、正偏差と負偏差の移り変わりがあることが読み取れます。
・鉛直p速度(*9)...擾乱の周期的な変動が見られます。例えば、2011年に経度200度付近に存在する大きな正の偏差は、2014年にかけて弱まり、2015年にその領域は大きな負の偏差に取って代わられ、その後の2017、2018年には再び正偏差となっています。
また、2015年の顕著な負の偏差にはじまり、高温域や可降水量の正偏差領域と分布が似通っていることから、鉛直p速度の変化は、エルニーニョ、南方振動と、温度Tや水蒸気量など様々なパラメータを通して密接に関係していることも読み取れます。
(*3)...北緯5度から南緯5度、西経150度から西経90度の矩形をエルニーニョ監視海域3(NINO3)といい、北緯5度から南緯5度、東経160度から西経150度の矩形をエルニーニョ監視海域4(NINO4)といいます。見やすさのため、スクリプトではより広い範囲を描写するようプログラムしています。
(*4)...気象庁の定義に従い、1981年から2010年の気温の平均値としています。
(*5)...インドネシア付近と南太平洋付近でみられるテレコネクションパターン(後述)のうち、大気に関係するものの総称を南方振動、海洋に関係するものの総称をエルニーニョと言います。
気象庁の指定するエルニーニョの定義としては、NINO3域において、海面水温の基準値(その年の前年までの30年間の各月の平均値)との差の5カ月移動平均(その月を中心にとった5カ月間の平均)が6カ月以上続けて±0.5度以上、以下となったときをエルニーニョ、ラニーニャ現象としています。
(*6)...可降水量とは、地表から上空まで伸びる円柱を考えたとき、その円柱内に存在する水蒸気や雲が、すべて雨として落下したときの降水量のことで、単位はmmです。
(*7)...離れた二つの地域で、現象に何らかの相関がみられることです。
(*8)...一般に地表付近で、高気圧は低温、低気圧は高温であるためこのような対応になります(層厚の関係から、高気圧が全層で低温であったり、低気圧が全層で高温であることはなく、あくまで地上付近に絞られる考え方です)。
(*9)...一般に鉛直p速度は、
ω = dp/dt
で定義され、静水圧平衡かつ非圧縮性を仮定すれば、密度...1kg/m^2、重力加速度...10*m/s^2のとき
dp/pt = -ρg(dz/dt) = -10(dz/dt)
となり、鉛直速度に比例する量であることがわかります(単位はkg/ms^3)。
また、鉛直p速度が負のとき、実際の鉛直速度は正であることに注意すべきです。
小倉義光”一般気象学”(東京大学出版会,2016)[p179..182,282..293],”総観気象学入門”(東京大学出版会,2006)[p156]..エルニーニョ、南方振動について参考にしました
気象庁"エルニーニョおよびラニーニャ現象の発生期間"...発生期間の目安として参考にしました
"地球流体電脳倶楽部"Gphys チュートリアル"...スクリプト作成の参考にしました
なし
赤道上の様々なパラメータにどれほど相関関係があるのかについて出力してみたくなり(地表気温の描画だけではつまらないと思い)、四枚同時に出力するスクリプトに変更しました。パラメータは、相関関係があると考え安直に選びましたが、思っていたよりも対応関係が目に見える形で描画でき、加えて擾乱の周期的変動も確認することができたため、嬉しかったです。
スクリプト作成の際には、データから平年値を計算したり、数値を文字に変換し結合してタイトルに出力するなど、平年値と年平均値の差としてデータが出力できるよう、プログラムを工夫しました。また、四枚同時表示できるよう、ダウンロードコンテンツを使い、ラベルを消したり、位置を細かく設定したりしました。見やすさにもこだわり、コンター間隔と色のレベルを統一したり、縦横軸の長さの比を実際の比にするなど工夫しました。